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鴨太郎と私 過去編③ 万事屋編

鴨太郎と私 過去編③ 万事屋編




「よぉ。そろそろ起きたかい、伊東君は」
「かぶき町の女王がわざわざ遊びに来てやったネ!さっさと起きるヨロシ!」
「だ、駄目ですよ、銀さん、神楽ちゃん!」

一ヶ月と一週間。
集中治療室から一般病棟の一人部屋に移った伊東の身体は、少しだけ機械の管が少なくなっていた。
目はまだ覚まさないものの、それまで見張りを兼ねた真選組以外の面会は遮断されていたのが、一般人の見舞いの許可が下り、早速やってきたのは万事屋の三人だった。


「あの、これ、僕と神楽ちゃんで作ったんです。あとお登勢さん達やかぶき町の皆も手伝ってくれて」
「・・・・すごいね。ありがとう」
「私、頑張ったアルヨ!見て、
昴流のアネゴ!これ、私が作ったアル!」

新八君が持ってきたのは千羽鶴だった。
けれどそれは明らかに普通じゃない。神楽ちゃんが自分が作ったという鶴は明らかにサイズが馬鹿でかくて、折り紙で綺麗に折られているものもあれば、スーパーのチラシで折られているものもある。
頭としっぽがぐしゃぐしゃだったり、中にはガムの包み紙で折られているものもあった。

「あ、それ俺ね」
「言わなくても分かるよ、旦那。普通折らないよね?ガムの包み紙で折らないよね?」
「なに言ってんの。ご利益満点だよ、銀さんの千羽鶴」
「いや、糖尿病うつったらどうしてくれるの」
「わわわっ!や、やっぱり駄目ですよね、こんなの!」

私達の会話を横で聞いていた新八君が慌てて千羽鶴をしまおうとする。
それを笑って制してベットの脇のフックにかけた。

「いろんな人が作ってくれたんだね。ありがとう。ここなら目が覚めてすぐに見えるでしょ」
「そうですね。伊東さん、喜んでくれるといいんですけど」
「なんだか赤ちゃんのぐるぐるみたいアル」
「ああ、あの赤ん坊あやすやつ?それにしちゃあ随分可愛げのない赤ん坊だこと」

そう言いながら鴨太郎の頭を撫でると、神楽ちゃんが私の真似をして、鴨太郎の身体をあちこち撫でた。
駄目だよ、神楽ちゃん、という新八君の声に旦那がもっとやってやんな、と笑う。

「ん?アネゴ、これなにアルカ?」
「あれ、ほんとだ。落書き?」
「ああ、それね」

二人が見つけたのは、私が描いた鴨太郎の手の平の生命線だった。
あれから何度か消えかけては、描き足すというのを繰り返したため、線は随分太く濃くなっている。

「鴨太郎、生命線短いから寿命が長くなるようにおまじないしたの」
「ああ、そう言えば手相で金運とか運命線とかペンで描くといいって言いますよね」
「おもしろそうアルな!私もやるアル!」
「おいおい、神楽、なにする気だおめぇは」


一体どこから出したのか。神楽ちゃんは太いマジックペンを取り出すと鴨太郎の身体にかけてある布団のシーツに何か書き始めた。
新八君がわたわたと神楽ちゃんを止めようとするけれど、右フックを一発決められ地面に沈む。

「こーして、あーして、こーアル!!」
「おー、いいじゃんか。銀さんもやろーっと」


神楽ちゃんに続いて旦那が書き始める。腹を抱えながら起き上った新八君が悲鳴を上げた。

「わわわっ、まずいですって!なにやってんですか、あんたら!」
「大丈夫よ。病院の方には私が言っといてあげる。シーツ代払えば見逃してくれるでしょ」
「ええ!で、でも」
「いいからいいから。もしよかったら、新八君も書いてあげて」

そう言うと、旦那が新八君にペンを渡した。
新八君は少し戸惑いながらそれを受け取り、二人がしたよりも小さな字で、ペンを走らせていく。

「出来上がりアル」
「なかなかいいんじゃねぇの」
「ほ、ほんとによかったんですかねぇ・・・・」
「ふふっ、早く目を覚まさないと落書きだらけになりそうね」


目の前の光景を見ながら、四人顔を見合せて笑う。


『はやく起きろヨ!酢昆布一箱分奢るヨロシ  神楽』
『銀さんチョコパフェね。早く起きないと利子増えるぞ』
『早く元気になって下さい。みんなで待ってます 新八』


それはまるで卒業式の寄せ書きのよう。
シーツいっぱいに広がった文字に込められた思いは、きっと、


彼に届くだろう。









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