fc2ブログ

鴨太郎と私 ④真選組編

鴨太郎と私 ④真選組編
「へーい、姉御ォ、見舞いに来やしたぜぃ」
「バリバリせんべい食いながらか。つーか、誰も食べないからね。そんな激辛煎餅」
「あれ、知らないんですかい?伊東先生これが大好物で」
「一秒でバレる嘘は止めようね、総悟」
「・・・あれ、万事屋の連中来たんですかい?」
「まぁ丸分かりよね」


鴨太郎が入院して一か月と三週間、病室のベット、そのシーツの上はひどいことになっていた。
病院のベットは清潔であるはずなのに、そのシーツはマジックペンのインクで真っ黒になっている。
どいつもこいつも下手くそな字を後先考えずに書き殴っているせいだ。
二週間前、万事屋がシーツに書いた寄せ書きを真似して見舞い客が次々にシーツを黒く埋めていった。
その中には多分会ったこともないだろう万事屋の家主や、以前鴨太郎に助けてもらったという町人、そして真選組隊士達も含まれている。
今のところなにも書かなかったのは篠原だけだ。
あれから毎日のように見舞いにくる篠原は部下というよりは世話女房のように甲斐甲斐しい。


「じゃあ俺は」
「顔は止めなさいね、顔は」
「ちっ。じゃあ何処に書けってんでぃ」
「いや、まだあいてるところあるでしょ」
「えーーと、『沖田総悟参上』っと」
「総悟、反対側見てみ。思いっきり土方さんと被ってるから
シーツの反対側には『土方十四郎参上』の文字。
「うぉおおおお土方ァアアアア!!!」


医者の話では鴨太郎の容体は大分良くなってきているらしい。
包帯はミイラ並にぐるぐる巻きなものの、酸素マスクも外され自活呼吸も出来るようになった。
心電図の波も安定している。顔色も良い。もう、目覚めてもいいはずなのに。


「おーい、総悟。先に来ているのか?」
「近藤さん・・・・・また変なもん買って来たんですか」
「おお、昴流。いやぁ、店の人に勧められてなぁ」
「一体お店の人になんて説明すれば大の男にテディベア勧められるんです?」
「寂しがりのチェリーボーイがねんねしながら待ってるって言いやした」
「総悟・・・あんたの仕業ね・・・」


小学生の子供くらいの大きさのくまのぬいぐるみを抱えた近藤さんは、病室をぐるりと見回し見舞い品と寄せ書きが増えていることに満足そうに笑った。そしてぬいぐるみを部屋の隅にどさりと鎮座させる。
クマの首のリボンに付いているネームプレートには『KAMOTAROU』の文字。嫌がらせにも程がある。

「あとこれ、届いたから眼鏡と一緒に置いといてくれな」
「制服まで作ったんですか」
「おお、サイズはぴったりのはずだぞ!」
「一週間前は人生ゲーム、その前はお酒、メイド服、これはやくも宴会の準備ですか?」
「メイド服とくまはセットですぜぃ。名づけてにーにーと妹萌えセット
「はい、分かる人が少ないネタやめようか!」

とりあえず制服を棚に置いて、派手にラッピングされた眼鏡をその上に置く。
いつもレンズ越しに見ていた瞼はまだぴくりとも動かないけれど、いつ動いてもいいように準備をしておきたい、というのが近藤さんの意向だ。

「そういえば土方さんは?」
「ああ、トシなら喫煙室に寄ってから来ると」
「いるぜ、ここに」

その声に振り向くと、煙草の匂いを纏ったいつもの不機嫌面がそこにあった。
そしてその後ろには退の姿も。

「姉ちゃん、今日も泊まりなんだろ。着替え持って来たよ」
「ありがと。土方さん、事後処理終わりました?」
「ああ、なんとかな。伊東が復帰するにあたって隊士達の説得は骨だったがな」
「じゃあ後の問題は伊東本人ですか」
「だろうな。あの様子じゃ目が覚めても切腹しかねねぇ。まぁ、そん時きゃ近藤さん、あんたに任すぜ。俺は別に伊東が死んでも構わねぇからな」
「素直じゃないですね、副長。あれだけ熱心に隊士たちの説得してたくせに」
「うっせぇええ、山崎!黙ってろ!」
「ま、その前に先生が起きなきゃ話が始まらねぇですがねィ」


総悟がツンツン、と人差し指で鴨太郎の額をつつく。
今にも起きそうなくらい顔色も良いのに、まだ起きない。


「あ、今すっごいいいこと思いついた」
「なに、姉さん?」
「退、あんた鴨のぬいぐるみ買ってきなさいよ、いっぱいね」
「はぁ?」
「ああ、そりゃいいぜィ。寂しがり屋の先生にはぴったりでィ」
「でしょー。つーか、鴨太郎が親鴨。ププッ」
「じゃあ帰りおもちゃ屋寄ってくか!なっ!」
「近藤さん、あんたは帰って少しでも睡眠取ってくれ。今にも倒れそうな顔して何言ってんだ」
「そういうトシこそ目に隈出来てるぞ!ハハッ!お揃いだな!」
「全く二人とも自己管理がなってねぇなぁ。俺を見ろィ、肌ツヤツヤ」
「てめぇはさぼって寝てるだけだろうがぁああ!」


ベットにはシーツいっぱいの寄せ書き。棚の上には制服と眼鏡。
壁には神楽ちゃん達がくれた千羽鶴が日を追うごとに増えていく。
窓際の壁にはくまのぬいぐるみに、ゲーム、酒に激辛煎餅、花瓶いっぱいの花。
そして枕元には皆の笑い声。



起きたらきっと、寂しいなんて二度と言えないから。
言わせないから。


「さ、もう起きなよ鴨太郎」
「そうですぜ、早く土方暗殺計画立てやしょうぜ」
「ったく、お前のせいで散々だぜ」
「先生、あんたのことみんな待ってるからな!」
「篠原も心配してますよ、あいつ、先生のこと本気で尊敬していますから」


みんなみんな待っている。






*ネタ=ひぐらし
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

ブログで夢小説!ユメミニ
こちらで名前変換 変換しないと「昴流」になります
主人公の名前
   
最新記事
カテゴリ
最新コメント
FC2カウンター
検索フォーム
リンク
QRコード
QR