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鴨太郎と私の異変⑤

「で、のこのこ戻ってきたってわけですかい、この負け犬ヘタレヤローが」
「先生ぇえええ!!どうして昴流ちゃん取り戻して来なかったんですかぁあああ!」
「先生・・・」


伊東は総悟の言う通り手ぶらで帰ってきて、沖田、近藤に続き、とうとう篠原にまで白い目で見られ、
自室に引きこもっていた。








万事屋の子供達といい、こいつらといい、どうして僕が批難されなきゃいけないんだ、という言葉が喉に詰まっているが、それを出す気力もない。
もっと冷静でいるべきだった。いや、そもそもどうしてあの女が結婚するってだけで、僕が平常心を失わなきゃいけないんだ。
これが三文恋愛小説なら答えは決まっている。
だが、自分も彼女も隊士だ。仕事上の関係を超えるつもりがない以上、もっと他に取るべき行動があったはずだ。

「・・・・・きちんと祝辞を述べるべきか」

上辺だけの人間関係の中で、形式上の祝いの言葉ならいくらでも言った覚えがある。
同じ言葉を言えばいいだけ、それだけなのに。


「・・・先生」
「なんだ、篠原」

障子の外より篠原の気配がするが、入ってくる様子はない。
篠原の言いたいことは分かっている。篠原は僕と昴流が夫婦になることを望んでいる。
だが、それはあくまで篠原の希望であり、僕の考えとは違う。

「篠原、祝儀用に新札をおろしてきてくれ。あと祝儀袋はあったか?」
「本気で言ってるんですか、先生」
昴流君が本気なら、僕達がどうこう言う筋合いはないだろう」
「・・・・先生」
「篠原、この際だから言っておくが、僕は昴流君と男女の仲になるつもりはないよ」


障子の向こうで息をのむ気配がした。だが、相変わらず部屋に入ってこない。


「・・・・・・後悔しますよ」
「珍しいな、君がそこまで食い下がるとは」
「もう、後悔は一生分したはずです。俺も、先生も」


その言葉に息を飲む。
後悔はした。一生分じゃ足りないほど。
その結果得た絆の一つが、今の昴流と僕との曖昧な関係だ。
それをまた失いたくない。
だから、二人の間に男と女の関係など持ち込みたくない。
このままずっと、曖昧なまま、嫁にいかないという昴流と、一生独身だろう罪人の自分が屯所で暮らせればと、そう思っていた。


けれど、それさえ望めないなら、
罪深く、不相応で、けれどささやかな幸せが、奪われてしまうなら。


「いっそ、壊してしまうのもありなのか」



壊して、また築き上げた、真選組の絆のように。
昴流との絆もまた新しく、紡ぐことができるだろうか。
それがどんなに不器用な形でも。


「篠原」
「はい」
「今夜の予定は全てキャンセルだ」
「畏まりました」


ようやく部屋の障子を開けた部下は、満面の笑みで――――真っ赤なバラの花束を抱えていた。


「予想を裏切らないな、君は!!」
「求婚の定番です!!」




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