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鴨太郎としのと私

鴨太郎と篠原と昴流

「やだ、しの、そっちじゃない」
「じゃあこっちですか」
「違う違う・・・・あ、そこ」
「ここがいいんですね」



なんだかものすごく使い古されたセリフが自分の部屋から聞こえてきて、伊東鴨太郎は軽い眩暈を覚えて、ずれた眼鏡を人差し指で押し上げた。
分かっている、分かっている。このパターンは「なにやってるんだ貴様らァアア・・・あ、アレ?」
「やだぁ何を勘違いしているんですか、この助平」となるアレだ。よくある、アレ。

「ちょ、待って、しの、まだ」
「駄目ですよ、逃げちゃ」

アレだよな?アレですよね?仮にもここ僕の部屋なんですけど、まさか篠原に限ってそんなことないよな?
そっと障子を開く。その先には、

仰向けになった昴流の上に跨る部下の姿がありました。













「待てぇぇえええ!何をやっているんだ篠原!」
「なにって、マッサージですが」
「それはなにか!【SEI】のつく方か!それとも何かのプレイか!?」
「かもたろ・・・」
「ま、待て昴流君。その体制で起き上がろうとするな!足を開くな!つま先を立てるな!」
「先生、羨ましいんですか」
「勝ち誇った笑みを浮かべるな!!二人ともそこに正座!!正確かつ簡潔に何をしていたか述べよ!」
「しのが排卵日によく効くマッサージがあるっていうから」
「そんなマッサージがあるか!種付けか!?種を植え付けるつもりなのか、篠原ぁああ」
「じゃああと任せました、先生」
「なにをだ!?」


篠原がおもむろに立ちあがり、礼儀正しく一礼すると部屋を静かに後にした。
その仕草だけ見ればいつもの優秀な部下の姿だ。
それだけに。
目の前に残されたものにどう対処したらいいか分からず、伊東は無駄に眼鏡の上げ下げを繰り返した。


「かもたろ・・・・正座、もういい?」
「ぁ、ああ・・・崩して構わない」



昴流はこくん、と首を立てに振ると正座していた足を横に崩した。
男装を常とする彼女は普段着の男物の着流し姿で、先ほど寝っ転がっていたせいか少し襟が乱れている。
顔色は少し悪く、どこか言葉も舌足らずだ。
まさかとは思うが本当に篠原に何かされたのだろうか。いや、元忍たる昴流は幹部と同等の実力を持つ。篠原ごときに後れをとるはずもない。

「顔色が悪いな」
「お腹痛い・・・・」

そう呟いた昴流がすりすりとお腹を擦った。
その仕草と先ほどの篠原の言葉で、合点がいく。女性特有のアレだろう。

「薬は飲まないのかい?」
「効かないから」

ポツリと呟かれた言葉に、伊東は頷く。
忍として修錬を重ねてきた昴流は毒に対して耐性を持つよう訓練されている。
だがそれは同時に薬も効かない、というリスクを持ち、大抵の毒も薬も彼女にとっては意味を成さない。

「なら、部屋で寝ていたまえ」
「だって・・・」

ぎゅっと昴流が伊東のズボンの布を掴む。

「さがる、いないし」

病気になると心細くなるというが、普段男勝りな昴流がここまで弱気だといつもの毒舌も吐く気にならない。月のものは病気ではないと言っても、薬の効かない昴流にとっては拷問も同じだろう。
普段山崎が姉の体調や怪我にやたらうるさいのもこのせいなのだろうか、と思いながらいつも彼女が自分にするように、自分とは違う柔らかな髪をゆっくりと撫でる。

「じゃあ僕が看ててやるから。寝たまえ」
「お腹、撫でて」
「・・・・・・・・今日だけだぞ」

暖めると楽になると聞いたことがある。
男である自分にはそれがどういう痛みなのか想像もつかないが、人間外側からの痛みよりも内側からの痛みの方が弱いことは明白だ。
昴流をあぐらをかいた自分の膝の上に背中を預ける格好で座らせると、彼女の手に導かれるまま腹に手を当てて着物の上からゆっくりと撫でた。

「ん・・・・」

時々痛むのか声を上げながら、それでも先ほどよりも表情は穏やかだ。
もう一つ腕があったなら、彼女の腹を撫でながら仕事が出来るのに片腕ではそれも敵わない。
文机に置いてある置時計の針と昴流の表情を交互に見比べながら、溜息を吐かないよう鼻で息を吐く。


「そういえば、しのがね」
「ん?なんだ?」

てっきりこのまま寝てしまうかと思っていたら、突然昴流が口を開く。
くるりと顔をこちらに向けて見上げてくる仕草は普通の女性となんら変わらない。

「お腹痛いの、止める方法があるって」
「さっきのマッサージとやらかい?」
「ん~ん~~」

子供がするような声を上げて首を横に振る昴流に首を傾げる。

「かもたろが知ってるって」
「・・・・・・・? 僕が?」
「だから夜、かもたろのところへ行けって」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何か、前から企んでいるとは思っていたが」


部下が何を企んでいるか気付いて、伊東はビシっと動きを止めた。
昴流の言葉だけで答えを導いてしまった自分の思考回路にも嫌気が差す。
薄々は気付いていたが、どうもあの部下は自分と昴流をくっつけたくて仕方がないらしい。
伊東は断じて同僚とそういうことになるつもりはないし、ましてや相手は昴流だ。
自分が相手では弟や昴流を可愛がっている幹部達は納得しないだろう。
って、いやいやそうじゃなくて。
恋愛感情なんてないと自分に言い聞かせながら、昴流の腹を撫で続ける。


「だから今夜行っていい?」
「君が正気の時にもう一度今の言葉を十回反芻してそれでも来たいというのなら止めはしない」


早口でそう捲くし立てると、昴流は何か腑に落ちない症状で、伊東の胸にこてりと背中を預けた。
今は弱って正常な思考が働いていないだけだ。数日経てば、またあのやかましくてうっとおしい女に戻るだろう。
そう自分にいい聞かせて、昴流の米神に小さくキスを落とす。





天井裏でビデオを回し続ける篠原に気付かずに、伊東は時間が許すまで昴流の腹を撫で続けた。
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