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鴨太郎と布団と猫

鴨太郎と布団と猫






重い。
重くて重くて暑苦しい。
身体のあちこちが悲鳴を上げているのがわかる。
失くした左腕が痛んでいるのだろうか。汗が顔の窪みに沿って流れていくのがわかる。

「ーー・・ーー」

こういう時、誰かの名前を呼んで助けを乞うものだろうが、生憎僕には呼ぶ相手がいない。
右腕を動かしたくても動かない。
金縛りのような感覚の中、なんとか瞼を開こうと力を入れる。
頬を滑っていた汗が、わずかな震動に促されて落ちていく。


「・・・はっ」


突然広がる白い光に身じろぎする。ゆっくりと周囲を確認するように眼球を動かすとそこには、


見慣れた二つの塊があった。











「・・・・にょ・・たか・にゃ~・」
「・・・・・死・・やが・土方ァ・・・」
「・・・・・・・・起きたまえ、沖田君!昴流君!」


見慣れた塊の一つは、トレードマークとも言えるふざけたアイマスクをして僕の腹を枕にしてなにやら物騒な寝言を吐いている。夢の中でさえ殺されかけている土方君を思うと、例えライバルだとしても同情する。まぁ、なんだ。頑張れ、土方君。
そしてもう一人は僕の一本しかない腕を枕にこれまた珍妙な寝言を吐いている。正直どんな夢を見ているのか想像も付かない。ただ時々洩れる笑いに正直引く。

そもそもなぜこの二人が僕の布団に、いや、僕を布団に図々しくも寝ているのか。
寝所に招いた覚えはもちろん、部屋に入れた覚えもない。
ただ一つ、わかるのは、彼らが僕の上からどかない限り僕は起きることも動くことも出来ないということだ。


「こら、昴流君、沖田君、起きろ!朝だぞ!」

頭だけを持ち上げて二人を起こそうと試みる。が、なにせ腹と右腕を押さえられている。
金縛りの正体はこいつらだったのか、眉を吊り上げるも寝ている二人にはなんの効果もなく。
枕元に置いてある眼鏡を手に取ることも出来ず、身体を揺するとふにゃりとふぬけた声が耳元に触れる。

「・・・~~んん」
昴流君、起きたのか?」

昴流は僕の右腕を枕にしてその上をゴロゴロと転がると、顔を脇に突っ込んでその動きを止めた。

「・・・・・・・・・昴流君?」

そんなところに顔を突っ込まれると正直焦る。いや、別に臭いとか匂うとかそういうんじゃなくて。
横向きになった昴流の身体が僕の身体に添うように密着して――――


「男は女の身体を頭からつま先までねっとりと値踏みする。乱れた寝着の襟からは女の白い肌が覗いている。
それに舌を這わせればどんな味がするだろうか。男は薄く口を開けて女の首に舌をーーー」

「勝手にアナウンスをするな!というか起きたなら僕の上から起き上がれ、沖田君!」
「沖田(起きた)だけに?」
「誰がうまいことを言えと言ったァ!」
「いやですねィ、伊東先生。朝からそんなにはしゃいで子供ですかィ」
「・・・・・・これがはしゃいでいるように見えるなら、君は眼科に行くべきだな」
「目が悪いのは先生でしょうよ。あ、眠ィ。寝よ」
「寝るな!寝るならどきたまえ!」
「いやぁ、先生の傍は寝心地が良くてねぃ。姉御の言うとおりでぃ」
「は?」


これだけ騒いでいるというのに昴流はまだ目を覚ます様子がない。
いい加減に腕も腹も痺れてきた。
だが腹からどく気がないとばかりに沖田はごろごろと腹の上で寝がえりをうつ。

「ちょいと先生。腹を上下させないでくれやせんか。寝にくいんで」
「君は僕に呼吸をするなと?」
「エラ呼吸すりゃあいいじゃないですか。出来る!先生ならできやすぜ」
「・・・・もうツッコまないぞ。というか昴流君、君もいい加減起きたまえ!」
「姉御ォ、はやく起きねぇと剥いで縛ってツッコみますぜぃ。・・先生が」
「君、死んでくれないか、頼むから」


きゅるるるぅうう
間抜けが音が耳に響く。その音に沖田がようやく身体を起こした。

「姉御、起きてたんですかい」
昴流君、起きてたんならさっさと・・・」
「だって、鴨太郎が私のこと剥いで縛ってツッコみながら口に銜えさせるっていうから・・・」
「頬を赤らめてどぎついことを言うな。というかそこまで言ってないだろ!」
「うわぁ。まさに鬼畜の所業でさァ。先生、案外俺達気が合いそうですぜ」
「もういい。いいから、とりあえず消えてくれないか二人とも」

僕がそういうと二人は顔を見合わせる。そして二人とも起こしかけた身体を―――


ぱったりと倒した。


「寝るなァアアア!」
「「だって寝心地いいんだもん」」
「声を揃えるな!寝心地なんて良いはずがないだろう!」
「そんなことないよ。だって鴨太郎、お日様の匂いがするもん」
「・・・・・・・・・は?」
「ゴリラはタ〇菌臭ェし、土方はニコチン臭ェし、山崎はミントン臭ェし、他も臭ェ奴ばかりで。消去法で先生が残りました。おめでとうごぜぇまーす」
「消去法か!それは単に僕しかきちんと洗濯してないってことか?やつらまさか布団も干していないのか!?」
「ピンポーン!大正解ー」(棒読み)
「胸張って言うな!まさか君達自分の布団にカビ生やしたんじゃないだろうな!」
「「・・・・・・・・・・・」」
「黙るな!否定してくれ!」
「「おやすみなさい」」


ぎゅっと二人が僕の身体にまとわりつく。
陽の匂いなどするわけない。するならマメに干された布団からで僕にまとわりつく必要はどこにもないはずだ。
それなのに二人ともまるで親猫に寄り添う子猫のように無防備な姿を晒している。
その姿に起こす気など起きるはずもなく。
結局腹も腕も動かすことのできないまま時計の針だけが動き続けて。

あとに残されたのは二人の寝息と、次の会議で大掃除を提案しようという僕の決意だけだった。
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